最終更新日 2018年4月5日
これは私の指導学生に対する論文作成ガイドラインです.論文の内容よりも体
裁を重視した内容となっています.ご意見・コメント等がございましたら
kasahara[at]ieee.org までお願いします.
内容
論文を提出する際のチェック項目です.
日本語論文の場合もスペルチェック以外は基本的に同じです.
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参考文献は正確に記述されているか?
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初稿はダブルスペースの構成になっているか?
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スペルチェックをかけたか?
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単語の直後にピリオド・カンマを打っているか?
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ピリオド・カンマの直後にスペースを入れているか?
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数式の終りにカンマまたはピリオドをつけているか?
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図・表のキャプション位置は正確か?
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図・表のキャプション表記は論文全体を通じて統一されているか?
英語でも日本語でも論文を通じて一貫しなければならないフォーマットがあります.ここでは英語論文についての注意事項を挙げますが,日本語論文でも同じです.基本は参考にする論文誌のフォーマットを徹底的にマネをすることです.そのポイントはスペース・カンマ・ピリオドの完璧なマネです.
- 参考文献
一番簡単に書けるように思えて,間違いなしで書くことができないのが参考文献の記述です.原稿をチェックしていて一番気が滅入るところです.以下では IEEE の Transactions 系に沿った書き方を紹介します.
- 全体の注意事項
- 参考文献を通じてフォーマットを統一する.ある論文の雑誌名は略記,別の論文の雑誌名はフルタイトルということは絶対しない.
- 参考文献は第一著者の名字をアルファベット順,または論文での参照順にして並べる.
- 学術誌論文
(例)
[3] A. K. Parekh and R. G. Gallager, ``A generalized processor sharing approach to flow control in integrated services networks: The single node case," IEEE/ACM Trans. Networking, vol. 1, no. 3, pp. 344-357, 1993.
- 著者名
- 頭文字の直後にピリオドを入れる.ピリオドの後スペースを入れる.LaTeXではチルダ ~ を使うと一つ分のスペースが空く.文末のピリオドは直後のスペースが広くなりすぎるので使わない.
- 連名のうち,最後の名前の直前には and を入れる.
- タイトル
- ``と,"の間に論文タイトルを書く.
- 終りの記号はカンマ「,」の次にダブルクォート「"」の並びであることに注意すること.
- 「``」の直後および「,"」の直前に余分なスペースを入れない.
- 助詞・前置詞を除く主要単語の頭文字が大文字で統一されている場合もある.
- 雑誌名
- 「,"」の直後にスペースを入れる.
- 雑誌名をイタリックで記述.
- 略記名は論文誌等を参考にすること.
- 巻・号
- vol.またはno.の後,スペースを入れてから番号,カンマの順.
- ページ番号
- pp.の後,スペースを入れてからページ始めの番号,ハイフン -,終りのページ番号,カンマの順.
- 年号
- 年号の直後にピリオド.
- 月を入れるときは月,スペース,年号,ピリオドの順.
- 月の省略名を用いてもよい.
- 国際会議論文
(例)
[8] H. Zang and D. Ferrari, ``Rate-controlled static-priority queueing," in Proc. IEEE INFOCOM'93, Apr. 1993, pp. 227-236.
- 著者名・タイトル
学術論文誌と同じ
- 会議名
- 会議名の前にin Proc.を挿入.
- Proc.から会議名までイタリック.
- 会議名の次に開催場所を記述する場合もある.
- 開催年月
- 開催年月とページ番号が学術論文誌と逆.
- 月,年号の順.
- ページ番号
- pp.の後,スペースを入れてからページ始めの番号,ハイフン -,終りのページ番号,カンマの順.
- ページ番号を省略する場合もある.
- 本
(例)
[5] W. Feller, An Introduction to Probability Theory and Its Applications, Volume I. New York: Wiley, 1966.
- 著者名
学術論文誌と同じ
- 書籍名
- すべての単語をイタリック.
- 書籍名の直後にピリオド.
- 助詞・前置詞を除く主要単語の頭文字を大文字にする.
- 出版社名
- 米国の出版社の場合,所在地の直後にコロン「:」を入れ,出版社名を記述.
- 出版社名だけでもよい.
- 発刊年
- その他
他に以下の種類の文献がある.基本的には学術論文と同じような記述でよい.
- テクニカルレポート
- 学位論文
- 未発表原稿
タイトルの直後preprint.でよい.
- RFCやインターネットから取得可能なドラフト
URLを記述.
- マニュアル
- 参考文献の引用
(例) It has been reported that the Ethernet traffic exhibits the self-similar nature [2].
- 引用表記「[参考文献番号]」は一つの単語として扱う.すなわち,文中ならば直前・直後にスペース,文末や区切りならば直後にピリオド・カンマを打つ.
- 図のキャプション
(例) Fig. 1. Priority buffers node.
- キャプションは図の下につける.
- 大文字で始まってピリオドで終わる.
- 図の注意事項
図とキャプションだけで図の表す意味がわかるようにする.特にグラフでは以下の意味がわかるように工夫する.
- 横軸・縦軸
- 線種
- 必要最低限の固定されているパラメータセット
- 表のキャプション
(例)
TABLE I
QUALITATIVE DESCRIPTION OF AVAILABLE VBR VIDEO SEQUENCES.
- キャプションは表の上につける.
- 大文字で始まってピリオドで終わる.
- ピリオド・カンマについて
ピリオド・カンマの使い方に結構ミスが見られます.英語を書く機会が少ないせいと思いますが,ピリオド・カンマの直後にスペースを入れる癖があまり身に着いていないようです.
- ピリオド・カンマは単語の直後につける.
- ピリオド・カンマの直後にスペースを挿入.
- その他の記号について
- コロン「:」,セミコロン「;」は単語の直後に打ち,その後スペースまたは改行を入れる.
- 括弧の前後にスペースを挿入.
how to support quality of service (QoS) at the WDM layer.
- 数式
意外に思うかもしれませんが,論文中における数式は文章の一つです.
- 文中に数式がある場合は数式の最後にカンマをつける.
Hence, we obtain
f(x) = ax+b, (7)
where b is constant.
- 文末に数式がある場合は数式の最後にピリオドをつける.
Hence, we obtain
f(x) = ax+b. (7)
Using this equation, ...
書籍中の数式においてはこの限りではありません.
- 文中の数学記号・変数
文中では特殊な場合を除いて必ず斜体にすること.
LaTeXではドル記号$ではさむ.
- 略字の定義
本文中で最初に登場したときにはフルスペルで記述し,そのあと括弧で略字を定義する.以下その略字を使用できる.略字を定義した後フルスペルで記述することは絶対しない.
(例) The cell loss ratio (CLR) is ...
- 文中の省略形と文頭表現
Figure や Equation は文中では Fig. や Eq. と省略形で書けますが,文頭で
は用いられないことに注意しましょう.
(文頭例)Figure 3 shows the mean waiting time ...
(文中例)In Fig. 3, the mean waiting time increases ...
数値実験結果を示して議論を行う数値例の章で書くべき内容を以下に示します.
- 最初に数値実験結果全体を通じての基本パラメータ設定の説明.
- モンテカルロ・シミュレーション等,解析モデルと比較する実験を行っている場合には,シミュレーション実験の詳細(シミュレーションモデル,実験方法,データ処理方法等)を記述.
- グラフの説明
以下の項目を各グラフ毎に記載する.
- グラフの縦軸・横軸の紹介
- このグラフ作成用に設定したパラメータ値の紹介
- グラフの傾向
- 横軸の変数が左から右に向かって変化するときのグラフの変化
- 横軸の変数を固定して,線種の違いでグラフがどのように変化しているか?
- そのような傾向になる理由を対象システムの振る舞いの観点から記述.
上記に加えて
- 種類の同じ複数のグラフに対する考察(システムの設計や性能改善に
資する洞察や意義など)
以下は論文に何を書いたらよいかわからない人向けのアドバイスです.
- 概要・内容梗概・Abstract
論文の要旨を書く.
- 何をするのか?
- どのようにしたのか?
- その結果何がわかったか?
場合によっては背景・研究動機を頭に持ってきてから上記3項目を書く.
- はじめに・序論・Introduction
論文の顔.結論を示さないことがポイント.
- 研究の背景
- 問題の提起
- 問題解決のため何をするのか?
- 過去の研究
研究の独自性を強調するため,入念にサーベイすべき.
- 論文の構成
理論的な論文ではここで結論(定理など)を示し,内容はもっぱら証明に徹するスタイルもある.
- 内容
ネットワークやシステムの解析に関する研究はおよそ次のようになる.
- 対象システム・理論モデル・提案手法の紹介
- 理論解析
- 解析結果の数値実験・シミュレーション実験
- 結論・Conclusion
全体のまとめ.
- 何をやったか?
- どのようにやったか?
- 解析結果や実験結果から何がわかったか?
- 本文で取り上げなかった注意事項
- 今後の課題
Concluding Remark として本文中に示さなかった注意事項を挙げることもある.(理論系の論文に多い.)
- 参考文献
- 論文を書く上で参考にした文献を挙げる.
- 本文中で参照していない文献は挙げない.
- Henning Schulzrinne の論文の書き方(IEEE/ACM Trans. Networking に即した内容)
- Mark Allman, A
Referee's Plea. 査読者が苦痛を感じないような論文を書くための注意事項がまとめられている.
- 木下是雄著, 「理科系の作文技術」, 中公新書, 1981 は文章を書く上でかなり影響を受けた.
- マーク・ピーターセン著, 「日本人の英語」, 岩波新書, 1988 は英語で引っ掛かっていたものをかなりクリアにしてくれた.a と the の使い方,machines と machinery の違いには感動した.
-
William Strunk, Jr., The Elements of Style. 1918年に出版された英語文章の書き方ベストセラー.V章だけでも読む価値あり.
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