研究内容

大規模システム管理研究室では,不確実性の高い社会システム(大規模災害時の避難支援や仮想通貨技術など)に対し,IoTやビッグデータ解析,機械学習など最先端の技術を駆使して,協調や連携を創発する意思決定メカニズムの研究に取り組んでいます.

研究内容としては,限られた情報量やユーザ間の利害関係といった制約の下,最適な意思決定を行うメカニズムの実現を目指し,数理アナリティクス,リスク予測・分析,大規模データ処理アルゴリズム,ビッグデータ解析,機械学習,といった情報科学の最先端の知見を駆使して,人やモノの行動予測,大規模災害時の被害把握・避難支援の自動化,仮想通貨やスマートコントラクトといったフィンテックを支えるブロックチェーン技術,物流ネットワークやソーシャルネットワークから得られる莫大なグラフ構造データに対する高速解析技術といった,不確実性の高い社会システムのスマート化に向けた研究を幅広く行い,産業に密接した研究成果を発信しています.

モバイル・エッジ連携型自動避難誘導・リスク分析

2011年3月に起きた東日本大震災では,通信インフラの被災により,固定通信網・携帯電話網ともに長時間かつ広範囲で利用できなくなり,その結果,安否情報・避難情報・行政情報など様々な重要性の高い情報を被災者・救助者が円滑に収集・配信することができなかった事例が多数報告されています.本研究では,このような状況下においても,被災者を安全な経路・避難所へと迅速に導くことのできる避難誘導システムの実現を目指しています.特に,避難者とモバイル端末(携帯電話など)間での暗黙の連携による被災状況把握と避難誘導の自動化,避難者(の端末)間での道路網状態に関する情報共有,地理ビッグデータに基づく道路網のリスク予測といった様々な要素技術を組み合わせることで,問題の解決に取り組んでいます.  詳細を読む

大規模コンテンツ配信のためのネットワーク最適化

OSのセキュリティアップデートや動画・音楽の視聴など,インターネットを介したコンテンツ配信の利用が広まっています.こうしたコンテンツ配信においては,大容量・高レート・継続的な通信が求められることから,新規のコンテンツが公開された直後など,ユーザ数が急激に増加した際,配信サーバのアップロード回線容量がボトルネックとなる傾向があります.このような課題に対し,サーバによる配信に加えてシステムに参加中のユーザ端末(ピア)も受信したファイルの断片(ピース)を他のピアに送信するというPeer-to-Peer (P2P)技術の活用が期待されています.P2P技術は制御の困難さからこれまでにその利用方法における問題点(著作権侵害問題など)が指摘されてきましたが,その本質は,サービスに対する受給のバランスを備えたスケーラブルなシステムを実現できるという優れた技術です.近年では,Windows UpdateがP2P技術を採用するなど,再びその有用性に着目が集まりつつあります.本研究では,配信サーバの戦略的なデータ配送方式とゲーム理論におけるTit-for-Tat戦略に基づくピア間の適切なファイル交換技術を組み合わせることで,制御可能かつ最適なP2Pコンテンツ配信の実現に向けた取り組みを行っています.  詳細を読む

ゲーム理論に基づく利己的最適制御

インターネットや交通網など,私達は普段から様々な社会システムに支えられています.その際,動画サービスを途切れなく高画質で楽しみたい,目的地までできるだけ早く到着したい,といった思いを持つことは自然なことです.一方で,サービスを支えるシステムの資源は有限です.例えば,コンテンツ配信サービスの場合,配信サーバの処理能力やネットワークの回線容量などが資源として挙げられます.サービスを提供する側のシステムとしてはこのような資源制約の下,できる限り多くのユーザの満足度を向上させるなど,全体最適の考え方が求められます.本研究では,このようなシステム全体としての最適化を個々のユーザの合理的かつ利己的な意思決定の下で実現することを目指しています.

競争的プル型ブロードキャストの脆弱性分析

ブロードキャストは最も迅速に情報を伝達できる手段として様々なネットワークシステムで用いられています.その際,情報のサイズが大きい場合には,ネットワークの負荷を軽減するため,送信側がまずサイズの小さなメタ情報を隣接ノードに送信し,受信側ではその情報を保持していない場合にのみ情報を取得する,プル型のブロードキャストが用いられます.このような機構は,例えば,暗号通貨システムBitcoinにおける取引情報の塊であるブロック(最大で1 MB)の送受信に用いられています.一方で,近年,このようなプル型ブロードキャストにはタイムアウト制御の悪用による伝搬妨害攻撃のリスクが存在することが指摘されています.例えば,Bitcoinにおいてはマイナー間のブロック拡散競争に影響が生じます.本研究では,感染症の伝搬モデルに着想を得た数理モデルとイベント駆動型シミュレータを用いることで競争的プル型ブロードキャストの脆弱性を明らかにすることを目的としています.

超スケーラブル汎用ブロック・チェーン技術に向けた情報学的研究

仮想通貨の基盤技術であるブロック・チェーンには,分散性・安全性・拡張性の三要素を同時に満たすことができないトリレンマ関係が存在し,そのため不特定多数の参加ノードからなる分散システム上で,高度なセキュリティを保証しかつ高速なトランザクション承認を提供するブロック・チェーンの実現が不可能と言われています.本研究テーマでは,ブロック・チェーンのトリレンマを克服するための方法論を情報学横断的に探求することを目指しています.具体的には,(1) 脆弱なセキュリティの原因となるチェーン分岐現象を数理的に解明し,(2) 情報量が圧縮されかつ高速演算可能な先進的データ構造をブロック構造やチェーン・トポロジー構造に適用し,加えて(3) ブロックの高速ブロードキャスト配信を可能とするP2Pネットワーキング技術を創出し,それらの要素技術を効果的かつ有機的に統合・融合させることで,極めて汎用性の高い超スケーラブル・ブロック・チェーン技術の創出を目指しています.   詳細を読む

ブロック・チェーンに基づいたIoTアクセス制御

Wi-Fi,Zigbee,Bluetoothに代表されるネットワーク通信技術の急速な発展により,センサやユーザ・デバイス等のますます多くのオブジェクトがユニークなアドレッシングスキーム(例えば, インターネット)を介して相互接続され,モノのインターネット(IoT)が形成されようとしています.このような相互接続は,IoT内のすべてのピア間のデータ収集、集約および共有を加速する一方で,脆弱なIoTデバイスを接続することによって,不正なユーザがシステム内のリソースおよびサービスに不法アクセスできるようになり,重大なセキュリティ問題を引き起こす可能性があります. このように,IoTにおけるアクセス制御は非常に重要な研究課題になってきています. 既存のクライアント・サーバ型に代表される集中型アクセス制御方式には,2つの重大な欠点があります.ひとつ目は,アクセス制御ノードが敵対者によって侵害され,信頼できないアクセス制御をエンドユーザに提供する可能性があることです.もうひとつは,アクセス制御ノードが自然災害や人為的災害で破壊されることによって,アクセス制御方式が機能しなくなる可能性があることです.IoTシステムにおける不正アクセスを防止するため,信頼できる分散的なアクセス制御方式が緊急の課題となってきています.近年,ビットコインやイーサリアム等の基盤技術であるブロック・チェーンが,信頼できないピア間で信頼性の高い分散コンピューティングを実現するアプローチとして注目を集めています.本研究ではブロック・チェーンを基にしたスマートコントラクトを利用して,莫大な数の信頼できないセンサ・デバイス群で構成されるIoTシステム上で,信頼できる分散アクセス制御方式を実現することを目標としています.            詳細を読む

IoT セキュリティ

モノのインターネット(IoT)は,インターネットのようなインフラストラクチャーを介して様々なモノ(人,センサー,スマホなど)同士の情報交換を可能にし,e-ヘルス,スマートホーム,環境モニタリングなど幅広い重要なアプリケーションの基本的なアーキテクチャになっています.一般に,IoTアーキテクチャは,環境を感知するIoTノード,IoTノードから無線でデータを収集するIoTゲートウェイ,データを格納および処理するIoTクラウドおよびデータにアクセスするIoTユーザから構成されます.本研究では物理層認証,物理層暗号化,およびアクセス制御を組み合わせて,IoTアーキテクチャの最も脆弱なノード‐ゲートウェイデータ収集部分を保護するセキュリティフレームワークを提案します.    詳細を読む

システム・アナリティクス

応用確率論や理論アルゴリズム,ゲーム理論やメカニズム・デザインといった情報科学の知見を駆使して,ビッグデータを高度に活用する超大規模なデータセンターやネットワークシステムの高速性,高信頼性,高機能性,高い省エネルギー特性を実現する要素技術・システム構成法・システム制御法,さらにはシステム上で提供されるサービスの高度化や,システムを用いたビッグデータ処理技術に関する研究を行います.また,情報ネットワーク科学的観点から,ネットワーク化された大規模システムのハザードの挙動予測やハザード制御,システムの安全性とハザード管理・制御のトレードオフ分析に向けたネットワークモデリング,ネットワーク性能評価,ネットワーク設計法に焦点を当て,マルコフ連鎖的アプローチに加えて確定的なネットワーク性能評価法やリャプノフ最適化論に基づく情報流スケジューリング法,大規模ネットワークの高速シミュレーション手法等について研究を展開します.   詳細を読む

サービス・サイエンス

近年の ICT 技術の発展により,企業が顧客に対して提供する「サービス」はICT 技術の援用により益々高度化・多様化しつつある一方で,顧客が本当に満足できる「サービス」をどのように設計し,効率よく顧客に提供するか,という点については経験則に依るところが大きく,非効率の原因となっています.サービス・サイエンスは,従来経験則に依っていたサービス構成法やサービス提供法に対し,科学的アプローチにより普遍的原理を見い出してサービスの生産性と質の向上をはかり,さらにはサービス自体のイノベーションを起こすことで停滞する経済を活性化することを目指す新しい学問体系です.ここでは従来のオペレーションズ・リサーチや経営工学の基礎を大事にしつつも,それらの枠にとどまることなくサービスの経済的側面やサービス品質の社会科学的分析,サービスプロバイダ・マネージメントなど,より現場に踏み込んだ実践的な研究アプローチを積極 的に取り込んでいくことで,高品質かつ高効率なサービス提供法について知見を得ることを目指した研究を行います.    詳細を読む