研究内容 >> ネットワーク・デザイン >> コグニティブ無線

ネットワーク・デザイン(コグニティブ無線)

爆発的規模の無線端末収容に向けた自律分散的協調制御技術

近年の無線通信技術の高速化と大容量化,スマートフォンやタブレット端末に代表されるユーザ端末の小型化と高機能化に伴い,ユーザが移動しながら利用する通信サービスは多様化し,送受信データ量は増大の一歩を辿っています.近年の移動通信トラヒックは一年間で約1.6倍に増加する傾向にあり,今後益々増大する移動通信トラヒックに対応するため,現在第5世代移動通信システム(5G)に関する検討が国内外で活発になされつつあります.そこではネットワーク容量を現在の1,000倍に拡張すること,現在の100倍のオーダの端末数を接続できること,ピークレート10Gbpsを実現すること,レイテンシーを1ミリ秒以内に抑えること,といった技術課題が挙げられています.しかしながら無線周波数は限られた資源のため,無線通信のさらなる高速化と大容量化を実現するためには,周波数帯域の時間的・空間的な利用効率の向上が欠かせません.今後はユーザによる電話通信やデータ通信に加えて,自動車やスマートメータ,環境センサなどによるマシン・ツウ・マシン (M2M) 通信や機器間通信 (D2D) の対応も想定されており,センサやデバイスも含めた無線端末台数は,数兆台の規模に達することが予想されています.このような莫大な無線端末を効果的に収容するためには,集中管理型制御技術ではスケーラビリティの点で限界があり,そのため無線端末側でも無線周波数帯域管理やトラヒック集中を回避するアクセスポイント選択技術も組み入れた自律分散型の超大規模無線通信ネットワーク技術の開発が喫緊の課題となっています.

従来の自律分散型無線周波数帯域管理法の多くは,無線端末が周りの周波数利用状況を自律的に収集し,獲得した空き帯域情報を基に無線周波数帯域を使用します.例えば自律分散型コグニティブ無線では,二次利用端末は無線周波数帯域の使用状況をスペクトラムセンシングによって把握し,その帯域が空いていれば利用を開始します.しかしながら,自律分散型資源管理法の下でのシステム性能は個々の無線端末の状態推定精度に大きく依存し,周波数帯域の獲得方法によっては同一条件の通信品質を要求する無線端末間で不公平な帯域割当が生じる恐れがあります.

個々の無線端末の性能が高くない状況下でシステム全体の性能向上を図る手段として,端末同士が連携する協調制御技術があります.協調制御では,複数の無線端末がグループを構成し,グループ内で各端末が所有する情報を交換したり専有中の周波数帯域を提供し合うことにより,帯域使用状況の推定精度や通信スループットを改善します.今後接続すべき無線端末数が莫大になってくると移動する無線端末・無線機器の数も増大し,周波数帯域の需要が時間的にも空間的にも従来にない規模で変動することが予想され,加えて無線端末機器の不具合や故障の発生頻度も高くなり,このようなヘテロジニアスな端末環境下でもロバストに機能する自律分散型協調メカニズムが今後の通信の基盤技術として必要です.ここではコグニティブ無線に焦点を当て,莫大な数の無線端末が存在する環境下において周波数資源の利用状況を正確に把握し,かつユーザの需要を高精度に予測して周波数資源を時間的にも空間的にも効率的に利用でき,さらには故障機器が介在してもロバストに機能する自律分散型協調制御メカニズムについて研究を展開します.

前のページ | 次のページ