超スケーラブル汎用ブロック・チェーン技術に向けた情報学的研究

基盤研究(A) 採択課題: 19H01103 (2019-2022年度)

仮想通貨の基盤技術であるブロック・チェーンには,分散性・安全性・拡張性の三要素を同時に満たすことができないトリレンマ関係が存在し,そのため不特定多数の参加ノードからなる分散システム上で,高度なセキュリティを保証しかつ高速なトランザクション承認を提供するブロック・チェーンの実現が不可能と言われています.

DSSトリレンマと二種類のブロック・チェーン

本研究テーマでは,ブロック・チェーンのトリレンマを克服するための方法論を情報学横断的に探求することを目指しています.具体的には,(1) 脆弱なセキュリティの原因となるチェーン分岐現象を数理的に解明し,(2) 情報量が圧縮されかつ高速演算可能な先進的データ構造をブロック構造やチェーン・トポロジー構造に適用し,加えて(3) ブロックの高速ブロードキャスト配信を可能とするP2Pネットワーキング技術を創出し,それらの要素技術を効果的かつ有機的に統合・融合させることで,極めて汎用性の高い超スケーラブル・ブロック・チェーン技術の創出を目指しています.

フォークメカニズムの数理的解明

パブリック型ブロック・チェーンで高スケーラビリティを実現するためには,マイニングに代表される合意形成の処理時間を短縮することが必要です.しかしながら,合意形成処理時間を短縮すると,ある承認ブロックがP2Pネットワーク上の全参加ノードにブロードキャストされる間に,別ノードでブロックが承認されてチェーンが分岐するフォークと呼ばれる現象が頻発します.フォークが多発する状況では,悪意あるユーザが不正ブロックをチェーンに接続する危険性高まってセキュリティが脆弱になることが知られています.ここではフォーク現象を確率モデルや離散事象シミュレーションによって分析し,トランザクションの発生過程やブロックの接続プロトコルと,悪意あるユーザのブロック乗っ取り成功確率といったセキュリティ脆弱指標の間のトレードオフを定量的に解明することによって,合意形成アルゴリズムの改善に向けた知見を獲得することを目指します.

ブロック・チェーンのフォーク現象

研究成果

  1. Kasahara, S., and Kawahara, J., “Effect of Bitcoin Fee on Transaction-Confirmation Process,” Journal of Industrial and Management Optimization, vol. 15, no. 1, pp. 365-386, January 2019. doi:10.3934/jimo.2018047 arXiv:1604.00103
  2. Kawase, Y., and Kasahara, S., “A Batch-Service Queueing System with General Input and Its Application to Analysis of Mining Process for Bitcoin Blockchain,” 2018 IEEE International Conference on Blockchain (Blockchain-2018), pp. 1440-1447, 2018.
  3. 笠原正治, “極値理論と情報システム評価への応用,” 電子情報通信学会誌, vol. 100, no. 4, pp. 266-272, 2017. (あらまし)
  4. 笠原正治, “ビットコインと待ち行列モデル,” オペレーションズ・リサーチ, vol. 63, no. 8, pp. 474-479, 2018. (PDF)

ブロックの高速ブロードキャスト配信を実現するP2Pネットワーキング

ブロック高速同期技術

ブロック・チェーンのフォークを抑制するためには参加ノード間での高速なブロック同期が欠かせず,そのためには承認ブロックデータを全ての参加ノードに高速ブロードキャストする必要があります.ここでブロック転送遅延が短ければフォークは発生しにくく,長いとフォークが発生しやすいように,ノード間のブロック転送遅延とフォーク発生頻度には強い相関があります.ここではブロック転送遅延を可能な限り低減するためのP2Pネットワーキング技術の研究を行います.

先進的データ構造を用いたブロック生成プロトコル

ビットコインやイサリアムのブロック・チェーンは,トランザクションが格納されたブロックを直列に接続することで取引台帳データベースを構成しています.直列型接続の利点は,ブロック単位の順序保証と整合性確認の容易性が挙げられます.一方で,ブロック・チェーンに接続できるブロックが空間的・時間的にただ一つであるため,接続ブロックの承認処理を慎重に行う必要があり,そのためPoWのような長時間の合意形成アルゴリズムが必要になっています.ここでは承認処理負荷を抑えつつフォークの多発をも抑制可能なブロック構成法とチェーン接続法を,先進的なデータ構造を基に検討を行います.

ブロックとチェーントポロジー